デジタルアート初心者:アナログで描いた下絵をソフトに取り込んで描く方法
デジタルアートを始めたいと考えている方の中には、これまで鉛筆やペンで絵を描いてきた方もいらっしゃるでしょう。慣れ親しんだアナログでの描き方から、いきなりすべてをデジタルに移行するのは少しハードルが高いと感じるかもしれません。
そこで今回は、アナログで描いた線画や下絵をデジタルアートソフトに取り込み、その上から線をきれいに描き直したり、色を塗ったりする方法についてご紹介します。アナログの良さを活かしつつ、デジタルの便利さも取り入れる、最初のステップとしておすすめです。
アナログ下絵をデジタルで使うメリット
アナログで描いた下絵をデジタルに取り込んで使うことには、いくつかのメリットがあります。
- 慣れた方法で始められる: 最初にアイデアやラフを描く段階は、これまで通り紙と鉛筆で行えるため、スムーズに作業に入れます。
- ペンタブレット操作に慣れていなくても大丈夫: 細かい線や構図の検討など、アナログで得意な部分を先に済ませておけるので、ペンタブレットでの線画作業の負担を減らせます。
- デジタルの編集機能を活用できる: 取り込んだ下絵を自由に拡大縮小したり、明るさを調整したり、レイヤー機能を使って下絵の上に簡単に線画を描き直したりできます。
アナログ下絵の準備:スキャンまたは撮影
まず、デジタルアートソフトに取り込みたいアナログの下絵を用意します。これをデジタルデータにするには、スキャナーを使うか、スマートフォンなどのカメラで撮影する方法があります。
どちらの場合も、以下の点に注意すると、よりきれいに取り込めます。
- 明るい場所で行う: 下絵全体に光が均一にあたる場所を選びます。影が入らないように注意しましょう。
- まっすぐに写す: 下絵に対してカメラやスキャナーをまっすぐ平行に構えます。斜めにならないように気をつけましょう。
- できるだけ高解像度で: 細かい線や情報を残すために、可能な範囲で解像度を高く設定してスキャンまたは撮影します。
撮影した画像データやスキャンデータは、後でパソコンに取り込める形式(JPEGやPNGなど)で保存しておきます。
デジタルアートソフトに下絵を取り込む
次に、用意したアナログ下絵の画像データをデジタルアートソフトに取り込みます。ソフトによってメニューの名称は異なりますが、一般的な手順は以下のようになります。
- デジタルアートソフトを起動します。
- 新しくキャンバス(絵を描くための白い画面)を作成します。キャンバスのサイズは、描きたい絵のサイズや用途に合わせて設定します。
- メニューから「ファイル」や「読み込み」「画像を開く」などの項目を選びます。
- 先ほど保存したアナログ下絵の画像ファイルを選択し、キャンバス上に表示させます。
多くのソフトでは、この時点で画像が新しいレイヤーとして表示されることが多いです。「レイヤー」については別の記事で詳しく解説していますが、ここでは「透明なシートに下絵が写し取られたもの」と思っていただくと良いでしょう。
取り込んだ下絵を調整する
取り込んだ下絵は、キャンバスのサイズに合わなかったり、少し傾いていたりすることがあります。デジタルアートソフトの機能を使って、描きやすいように調整しましょう。
- 位置合わせ・拡大縮小・回転: ツールバーやメニューにある「移動」「変形」といった機能を使って、下絵をキャンバス上の描きたい位置に移動させたり、大きさを調整したり、傾きを直したりできます。
- 線を見やすくする: アナログ下絵の線が薄い場合や、不要な汚れが写り込んでいる場合は、「明るさ・コントラスト」や「色調補正」といった機能で調整できることがあります。線の部分を濃くしたり、背景の紙の色を明るく飛ばしたりすると、線画を描きやすくなります。
- 下絵レイヤーの設定: 下絵の線が濃すぎると、その上に描く新しい線が見えにくくなることがあります。下絵が表示されているレイヤーの「不透明度」を下げて、透けるように調整しましょう。20%〜40%程度にすると、上に描く線が見やすくなることが多いです。また、誤って下絵レイヤーに描いてしまわないように、「ロック」機能を使って、下絵レイヤーを編集できないようにしておくことをおすすめします。
これらの調整は、下絵が配置されているレイヤーに対して行います。
下絵の上から線画を描く
下絵の準備ができたら、いよいよその上から線画を描いていきます。
【重要なポイント】 必ず、下絵が表示されているレイヤーとは別の、「新しいレイヤー」を作成して線画を描いてください。 これは、下絵と線画を分けておくことで、後から下絵を非表示にしたり、線画だけを修正したり、線画の下に色を塗ったりするのが簡単にできるようになるためです。
- レイヤー一覧を表示し、「新規レイヤー作成」などのボタンを押して新しいレイヤーを追加します。
- 追加した新しいレイヤーが選択されていることを確認します(多くのソフトでは、選択中のレイヤーがハイライト表示されます)。
- ブラシツールやペンツールを選び、色を黒などの線画に適した色に設定します。
- 下絵の線を見ながら、新しいレイヤーに丁寧になぞるように線を描いていきます。
間違えても「元に戻す」機能を使えばすぐに修正できますし、デジタルなので何度でも描き直しが可能です。
下絵を非表示にする
線画がすべて描き終わったら、下絵の役割は終わりです。下絵が表示されているレイヤーを非表示にしましょう。
レイヤー一覧で、下絵レイヤーの横にある「目のマーク」やチェックボックスなどをクリックすると、そのレイヤーに表示されているものが非表示になります。これで、きれいに描き起こした線画だけが表示された状態になります。
あとは、この線画レイヤーの下に新しいレイヤーを作成して色を塗ったり、線画自体を調整したりと、自由にデジタルでの作業を進めていくことができます。
まとめ
アナログで描いた下絵をデジタルアートソフトに取り込んで活用する方法について解説しました。この方法を使えば、慣れ親しんだアナログの描き心地を活かしつつ、デジタルの便利な機能を使って線画をきれいに仕上げたり、手軽に色を塗ったりといったステップに進めます。
デジタルアートに慣れるための第一歩として、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。