デジタルアート:描いた線や絵を移動・拡大・回転させる方法
はじめに
これからデジタルアートを始めたいと考えている方にとって、アナログでの絵とデジタルでの絵の大きな違いの一つは、「描いたものを後から自由に編集できる」という点ではないでしょうか。特に、一度描いた線や絵を「移動」「拡大縮小」「回転」させるといった操作は、デジタルならではの非常に便利な機能です。
これらの操作を覚えることで、絵全体のバランスを調整したり、描いた素材を再利用したりすることが容易になり、作品制作の効率が格段に向上します。
この記事では、デジタルアートにおけるこれらの基本的な変形操作について、超初心者の方にも分かりやすく解説していきます。絵の配置を変えたい、キャラクターの大きさを調整したいといった場合に、どのようにすれば良いのかが分かります。
デジタルアートで描いたものを変形する基本的な考え方
デジタルアートソフトで描いたものの一部を移動したり、大きさを変えたり、向きを変えたりするには、いくつかのステップが必要です。基本的な流れはどのソフトでも共通しています。
- 変形したい範囲を選択する まず、絵全体のどこを編集したいのかをソフトに知らせる必要があります。これを「選択」と呼びます。特定の線や塗り、またはその一部など、変形したい範囲を「選択ツール」などを使って指定します。選択された範囲は、点線や枠などで示されることが多いです。 また、デジタルアートでは「レイヤー」という透明なシートに分けて絵を描くことが一般的です。レイヤーごと、つまりシート全体に乗っているものをまとめて変形することもよくあります。
- 変形機能を選ぶ 選択した範囲やレイヤーに対して、どのような編集を行いたいかをソフトに指示します。「移動ツール」や「変形ツール」といった機能を選びます。
- 操作を行う 選んだ機能を使って、実際に移動、拡大縮小、回転などの操作を行います。マウスやペンを使ってドラッグしたり、数値で指定したりする方法があります。
- 操作を確定させる 目的の形や位置になったら、操作を確定させます。これにより、変形が絵に反映されます。
この基本的な「選択」→「機能選択」→「操作」→「確定」という流れを覚えておくと、さまざまな編集操作に応用できます。
描いた線や絵を「移動」させる方法
描いた絵の一部や全体を、キャンバス上の別の場所に動かしたい時に使うのが「移動」の操作です。
- 一部を移動する場合: 動かしたい部分を「選択ツール」(例: 長方形選択ツール、なげなわツールなど)で囲みます。選択範囲が指定されたら、「移動ツール」に切り替えて、選択範囲内をドラッグします。選択した部分だけが切り取られるように移動するか、元の場所にも残したままコピーして移動するかは、ソフトの機能や設定によって異なります。多くの場合、選択範囲を指定してから移動ツールを使うと、その部分だけが移動します。
- レイヤー全体を移動する場合: 特定のレイヤー(透明なシート一枚分)に乗っている絵を全て動かしたい場合は、そのレイヤーを選んだ状態で「移動ツール」を使います。レイヤー全体をそのままドラッグして好きな場所に移動させることができます。
デジタルアートでは、描いたものを後から気軽に移動できるため、全体の構図を調整したい時などに非常に便利です。
描いた線や絵を「拡大・縮小」させる方法
描いたものの大きさを変えたい時に行うのが「拡大・縮小」です。キャラクターのサイズを調整したり、背景の一部を大きく見せたりする場合に使います。
- 拡大縮小の手順: 拡大縮小したい部分を「選択ツール」で選びます(レイヤー全体の場合はレイヤーを選択します)。その後、「変形ツール」や「自由変形」といった機能を選びます。すると、選択した範囲の周りに「バウンディングボックス」と呼ばれる四角い枠が表示されることが多いです。 このバウンディングボックスの角や辺にある「ハンドル」(小さな点や四角形)をマウスやペンでドラッグすることで、大きさを変えることができます。
- 縦横比を保つには: ハンドルをそのままドラッグすると、縦と横の比率が変わってしまい、絵が歪んでしまうことがあります。多くの場合、キーボードの「Shift」キーを押しながら角のハンドルをドラッグすると、縦横比を維持したまま拡大縮小できます。絵の形を崩したくない時にはこの方法を使いましょう。
- 数値で指定する: ソフトによっては、拡大率や縮小率をパーセントなどの数値で正確に指定することも可能です。
描いた線や絵を「回転」させる方法
描いたものの向きを変えたい時に使うのが「回転」の操作です。オブジェクトを斜めに配置したり、キャラクターのポーズに動きをつけたりする際に役立ちます。
- 回転の手順: 回転させたい部分を「選択ツール」で選びます(レイヤー全体の場合はレイヤーを選択します)。「変形ツール」や「自由変形」といった機能を選び、バウンディングボックスを表示させます。 バウンディングボックスの外側や、回転の中心となるポイントの近くにマウスカーソルを持っていくと、回転操作ができるカーソルに変わることがあります。そのままドラッグすると、そのポイントを中心にオブジェクトを回転させることができます。
- 正確な角度で回転する: ソフトによっては、回転角度を数値で指定する入力欄が表示されることがあります。例えば「45度」と入力すれば、正確に45度回転させることができます。
その他の便利な変形操作
移動、拡大縮小、回転の他にも、デジタルアートソフトにはさまざまな変形機能が備わっています。
- 反転: 左右や上下に絵をひっくり返す操作です。同じものを左右対称に描きたい時などに便利です。
- 自由変形: バウンディングボックスのハンドルをより自由に動かして、絵を歪ませたり、遠近感をつけたりする高度な変形操作です。
最初は移動、拡大縮小、回転の基本から始めるのが良いでしょう。これらの操作だけでも、デジタルアート制作の自由度は大きく広がります。
変形操作の注意点
デジタルで描いたものを変形させる際、特に拡大を行う場合には一つ注意しておきたい点があります。
絵を大きく表示する際、もともと細かい点で構成されている画像(ラスター画像といいます)の場合、拡大しすぎると点の粗さが目立って、線や色がぼやけてしまうことがあります。これを「解像度の劣化」といいます。
細部まで綺麗に見せたい作品の場合は、最初から完成させたいサイズよりも大きなキャンバスで描くか、拡大しても劣化しにくい「ベクター形式」で描くといった方法がありますが、これらは少し専門的な内容になります。
まずは「大きくしすぎると、絵が少し荒くなることがあるんだな」という点だけ覚えておくと良いでしょう。描画ソフトの設定や、どのような種類の絵を描きたいかによって適切な方法は異なりますので、徐々に学んでいくと良いでしょう。
まとめ
デジタルアートで描いた絵を後から自由に「移動」「拡大縮小」「回転」させるといった変形操作は、非常に強力で便利な機能です。これらの操作を使いこなすことで、作品制作がよりスムーズになり、表現の幅も広がります。
「選択ツール」で編集したい範囲を選び、「変形ツール」などで操作するという基本的な流れを理解することが第一歩です。最初は難しく感じるかもしれませんが、実際にソフトを開いて簡単な図形などで試してみることから始めてみてください。
デジタルアートの便利な機能を活用して、絵を描くことを楽しんでいただければ幸いです。