デジタルアート初心者のQ&A

SNS用?印刷用?デジタルアートのサイズ・解像度・dpi 用途別の正しい設定

Tags: デジタルアート, 初心者向け, サイズ, 解像度, DPI, 設定, 用途

これからデジタルアートを始めたいと考えている方の中には、ソフトを開いて最初に表示される設定項目、特に「キャンバスサイズ」「解像度」といった言葉を見て、「これは何だろう」「いくつに設定すれば良いのだろう」と悩んでしまう方がいらっしゃるかもしれません。

絵を描き始める前にこれらの設定を決めることは、デジタルアート制作においてとても大切です。なぜなら、一度描き始めてしまうと、後から大きく変更するのが難しかったり、作品の仕上がりに影響したりするからです。

この記事では、デジタルアートを始める際に知っておきたい「サイズ」「解像度」「dpi」という三つの言葉の意味と、それぞれが絵にどう影響するのか、そして、あなたが描いた絵をどんな目的で使いたいか(例えばSNSに投稿したいのか、それとも印刷したいのか)によって、どのように設定を選べば良いのかを分かりやすく解説します。

これらの基本を理解することで、最初の設定で迷うことなく、スムーズにデジタルアート制作を始めることができるでしょう。

デジタルアートの「サイズ」とは何ですか?

デジタルアートにおける「サイズ」は、主にピクセルという単位で表されます。ピクセルとは、デジタル画像を構成する非常に小さな点のことで、これらの点が縦と横にどれだけ並んでいるか、その数を「幅(横)」と「高さ(縦)」で示したものが画像のサイズです。

例えば、「1920px × 1080px」というサイズであれば、横に1920個、縦に1080個のピクセルが並んでいる絵、ということになります。

このピクセル数が多ければ多いほど、絵の情報量が多くなり、より細かな表現が可能になります。しかし、その分ファイルサイズが大きくなり、絵を描くためのパソコンに高い性能が求められることもあります。

デジタルアートの「解像度」とは何ですか?

次に「解像度」についてです。解像度は、一般的に「dpi(dots per inch)」や「ppi(pixels per inch)」という単位で表されます。これは、「1インチ(約2.54cm)の長さに、どれだけのピクセルが詰まっているか」という密度のことを示しています。

例えるなら、同じ数の砂利を、広い箱に入れるか狭い箱に入れるかで、砂利の詰まり具合(密度)が変わるようなものです。

デジタルアートソフトでは「dpi」という表記を見ることが多いですが、デジタル画像においては厳密には「ppi」と呼ぶこともあります。しかし、意味するところは同じで、「1インチあたりのピクセル数」と考えていただいて問題ありません。

「サイズ」と「解像度」の関係は?

サイズ(ピクセル数)と解像度(dpi/ppi)は密接に関係しています。

逆に、物理的なサイズ(例:A4サイズで描きたい)と解像度(例:300dpiで描きたい)が決まると、必要なピクセル数が決まります。

この関係性が、絵を「Webで表示」するのか「印刷」するのかによって、設定を使い分ける必要がある理由です。

なぜこれらの設定が重要なのでしょうか?

これらの設定が大切な理由はいくつかあります。

  1. 描き始めると変更が難しい: キャンバスのサイズや解像度は、絵を描き始める前に決めるのが一般的です。描き進めた後に「やっぱりもっと大きくしたい」「解像度を上げたい」と思っても、画像を拡大すると絵がぼやけたり粗くなったりしてしまい、綺麗に仕上げるのが難しくなります。
  2. 用途によって求められる品質が違う: SNSに投稿する絵と、ポストカードにして印刷する絵では、必要な細かさ(解像度)が全く異なります。用途に合わない設定で描いてしまうと、「SNSでは綺麗に見えたのに、印刷したらぼやけてしまった」「印刷には十分な解像度で描いたのに、SNSにアップしたらファイルサイズが大きすぎた」といった問題が起こることがあります。
  3. パソコンへの負担: サイズや解像度が高すぎると、絵の情報量が多くなりすぎてしまい、パソコンの動作が重くなったり、ソフトが不安定になったりすることがあります。

用途別の推奨設定目安

それでは、実際に絵を描く目的別に、キャンバスの「サイズ」と「解像度」の目安を見てみましょう。これはあくまで一般的な目安であり、最終的にはご自身の環境や目的に合わせて調整してください。

1. SNSやWebサイトに投稿する場合

主にパソコンやスマートフォンの画面で表示することを目的とする場合です。画面で表示される画像の解像度は、一般的に72dpiで十分と言われています。最近はより高精細な画面も増えているため、96dpiや150dpiなど、少し高めに設定する方もいらっしゃいます。

例えば、TwitterやInstagram、pixivなどのSNSに投稿する場合、「幅 1200px × 高さ 1200px、解像度 72dpi」といった正方形のキャンバスや、「幅 1500px × 高さ 2000px、解像度 96dpi」のような縦長のキャンバスなどがよく使われます。

2. 一般的な自宅プリンターで印刷する場合(例:A4サイズ)

描いた絵を自宅のプリンターで印刷して、手元に置いたり飾ったりすることを目的とする場合です。印刷物は画面表示よりも高い解像度が必要になります。

例として、A4サイズ(210mm × 297mm)を300dpiで印刷する場合に必要なピクセル数を計算してみましょう。

したがって、A4サイズ(縦向き)で300dpiの絵を描きたい場合は、キャンバスサイズを「幅 2480px × 高さ 3508px、解像度 300dpi」に設定すると良いでしょう。

3. 高画質で大きな印刷物や商用印刷の場合

専門の印刷業者に依頼して、ポスターのような大きなサイズで印刷したり、商業目的で印刷したりする場合です。この場合は、印刷所から解像度やカラーモード(色の表現方法)に関する指定があることが多いです。

このような目的で描く場合は、事前に印刷所のウェブサイトなどを確認し、推奨される設定に従うことが最も重要です。

キャンバス設定のステップ(一般的なソフトの場合)

多くのデジタルアートソフトで、新しく絵を描き始める際には以下のような設定画面が表示されます。

  1. ソフトのメニューから「ファイル」→「新規作成」などを選びます。
  2. 表示されるウィンドウで、キャンバスのサイズと解像度を設定します。
    • 単位の選択: サイズは「px(ピクセル)」、解像度は「dpi」になっているか確認します。インチ(inch)やミリメートル(mm)などの単位も選べますが、まずはピクセルとdpiで設定する方法に慣れるのがおすすめです。
    • 幅と高さ: 描きたい絵の縦横のピクセル数を入力します。
    • 解像度: 目的のdpiの数値を入力します。
    • カラーモード: RGBカラーとCMYKカラーを選ぶ項目がある場合が多いですが、初心者の方はまずRGBカラーを選んでおけば問題ありません。CMYKは印刷向けのカラーモードですが、画面で見た色と印刷結果の色が変わることがあるため、最初はRGBで描き、印刷所の指定に合わせて最後に変換する方が分かりやすいでしょう。(※カラーモードについては別の記事で詳しく解説します)
  3. その他の設定(背景色など)を確認し、「OK」や「作成」ボタンをクリックします。

これで、あなたの目的に合ったキャンバスで絵を描き始める準備ができました。

まとめ

デジタルアートのキャンバス設定における「サイズ(ピクセル)」「解像度(dpi)」は、描いた絵の見た目や用途に大きく影響する大切な要素です。

最初は難しく感じるかもしれませんが、まずは「SNSに投稿したいからこの設定」「試しに自宅で印刷してみたいからこの設定」のように、目的別に基本的な設定を覚えておけば大丈夫です。描き慣れてくるにつれて、それぞれの数値の意味や、自分の表現したいことに合わせて調整する方法が自然と分かってくるでしょう。

最初の設定を終えたら、さっそくあなたの描きたい絵に挑戦してみてください。