デジタルアート制作中のトラブル:ソフトが落ちた!データが消えた!そんな時に慌てないための備えと対処法
デジタルアート制作中の「困った!」に備えましょう
これからデジタルアートを始めたいと考えている方にとって、絵を描くことそのものだけでなく、「もし描いている途中でパソコンのソフトが動かなくなったらどうしよう」「せっかく描いた絵のデータが消えてしまったらどうしよう」といった不安もあるかもしれません。
集中して描いている時に、突然ソフトがフリーズしてしまったり、強制終了してしまったりといったトラブルは、残念ながらデジタルアートの世界では完全に避けるのが難しい場面もあります。
しかし、事前に少しの知識と準備をしておけば、万が一の時に慌てずに済んだり、大切なデータを失わずに済んだりすることが増えます。
この記事では、デジタルアート初心者の方向けに、ソフトが落ちたりデータが消えたりした場合の「備え」と、実際にトラブルが起きてしまった時の「対処法」について、分かりやすくご紹介します。
トラブルに「備える」ことの重要性
何時間もかけて一生懸命描いた絵が、ちょっとしたトラブルで消えてしまったら、とても悲しい気持ちになります。そうならないためにも、まずは「備える」ことから始めましょう。
1. こまめな「保存」を習慣にしましょう
アナログでお絵かきをする時には「保存」という概念はありませんが、デジタルアートでは、描いた内容はパソコンの中にデータとして保存する必要があります。そして、その保存作業をこまめに行うことが、トラブル対策の基本中の基本です。
- ショートカットキーを活用: 多くのデジタルアートソフトでは、「上書き保存」をするためのショートカットキーが用意されています。Windowsなら「Ctrl」キーと「S」キーを同時に押す、Macなら「Command」キーと「S」キーを同時に押すのが一般的です。定期的にこのショートカットキーを押す習慣をつけましょう。例えば、「線が描き終わったら保存」「色塗りが一段落したら保存」のように、作業の区切りごとに保存すると良いでしょう。
- 「別名で保存」も活用: 作業が大きく進んだ時や、新しい描き方に挑戦する前などには、「別名で保存」機能を使うことをお勧めします。例えば「イラスト_01.clip」というファイルで描いていて、次の段階に進む時に「イラスト_02.clip」という名前で保存するのです。こうすることで、もし新しい描き方がうまくいかなかったり、その後の作業で問題が起きたりしても、いつでも一つ前の状態(イラスト_01)に戻ってやり直すことができます。
2. ソフトの「自動保存機能」を確認しましょう
最近の多くのデジタルアートソフトには、「自動保存」の機能が備わっています。これは、ユーザーが手動で保存しなくても、ソフトが一定時間おきに自動で作業状態を記録してくれる便利な機能です。
ソフトの設定メニューの中に「自動保存」や「バックアップ」といった項目があるか確認してみてください。この機能が有効になっているか、そして自動で保存する間隔(例えば5分ごと、10分ごとなど)が適切に設定されているかを確認しましょう。もし設定方法が分からなければ、お使いのソフトの名前と一緒にインターネットで検索してみるのも良い方法です。
自動保存されたファイルは、ソフトが異常終了してしまった場合に、次回起動時に復旧できる可能性が高まります。
3. 大切なデータは「バックアップ」を取りましょう
パソコンは精密機器ですので、故障する可能性もゼロではありません。もしパソコン自体が壊れてしまった場合、その中に保存していたデータを取り出せなくなることもあります。
これを防ぐために、完成した作品のデータなどは、パソコン本体とは別の場所にコピーして保管しておくことをお勧めします。
- クラウドストレージ: Google Drive、Dropbox、OneDriveなどのクラウドストレージサービスを利用すると、インターネット上にデータを保管できます。これらのサービスは無料で使える容量もあります。
- 外部メディア: USBメモリや外付けハードディスクなどにデータをコピーする方法もあります。
定期的にこれらの場所にデータをコピーしておくことで、万が一の事態に備えることができます。
実際にトラブルが起きてしまった時の「対処法」
では、実際にソフトがフリーズしてしまったり、強制終了してしまったりした場合に、どのように対処すれば良いのでしょうか。
1. ソフトが応答しない(フリーズ)場合
画面が固まってしまって、マウスでクリックしても反応がない、ペンタブレットで描こうとしても何も描けない、といった状態です。
- まずは少し待ちましょう: ソフトが一時的に重い処理をしているだけかもしれません。数分待ってみると、動き出すことがあります。
- ソフトを終了させる: 待っても動かない場合、ソフトを終了させる必要があります。メニューから「終了」を選べる状態であれば、それが一番安全です。もしメニューも操作できない場合は、パソコンの機能を使ってソフトを強制的に終了させます。
- Windowsの場合: 「Ctrl」キーと「Shift」キーと「Esc」キーを同時に押すと、「タスクマネージャー」が開きます。そこで、動かなくなったデジタルアートソフトの名前を選び、「タスクの終了」ボタンを押してください。
- Macの場合: 画面左上のAppleメニューから「強制終了」を選びます。表示されたリストの中から、動かなくなったデジタルアートソフトを選んで「強制終了」ボタンを押してください。
注意点: ソフトを強制終了させた場合、最後に手動で保存した時点から、フリーズするまでの間に描いた内容は消えてしまう可能性が非常に高いです。
2. ソフトが強制終了してしまった場合
作業中に突然ソフトが画面から消えてしまったり、エラーメッセージが出て終了してしまったりするケースです。
- ソフトを再起動してみましょう: ソフトを再度立ち上げてみてください。多くのソフトでは、強制終了した場合に自動保存されたデータを検知して、「前回異常終了しました。復旧しますか?」のようなメッセージを表示してくれることがあります。このメッセージが表示されたら、迷わず復旧を試みてください。
- 自動保存ファイルの場所を確認: ソフトによっては、自動保存されたファイルが特定の場所に保存されている場合があります。もし復旧メッセージが出なかったり、復旧に失敗したりした場合でも、自動保存ファイルから一部の作業状態を復元できる可能性があります。お使いのソフトのヘルプや公式サイトで、自動保存ファイルの保存場所について調べてみると良いでしょう。
3. 保存したはずのデータファイルが見つからない場合
「あれ?さっき保存したのにファイルが見当たらない」という場合です。
- 保存場所をもう一度確認: ファイルを保存する際に、意図しないフォルダに保存してしまったということがよくあります。「どこに保存したか覚えていない」という場合は、まず「ドキュメント」フォルダや「ピクチャ」フォルダなど、普段ファイルを保存しそうな場所を探してみましょう。
- パソコン内を検索: ファイル名を覚えている場合は、パソコンの検索機能を使ってみましょう。Windowsの場合はスタートメニューの検索窓、Macの場合はSpotlight検索(画面右上の虫眼鏡マーク)を使うと、ファイル名でパソコン全体を検索できます。ファイル名の一部しか覚えていなくても検索できることがあります。
- バックアップからの復旧: もし定期的にクラウドストレージや外部メディアにバックアップを取っている場合は、そちらを確認してみましょう。少し前の状態に戻ってしまうかもしれませんが、データが全くないよりは良いはずです。
トラブルを「起こりにくくする」ためのヒント
備えや対処法を知っておくことは大切ですが、そもそもトラブルが起こりにくくするためにできることもあります。
- パソコンの動作環境を確認: 描きたい絵のサイズ(解像度)を大きくしたり、レイヤーをたくさん重ねたりすると、パソコンには負担がかかります。お使いのパソコンが必要な性能(スペック)を満たしているか、確認してみましょう。特にメモリ(RAM)の容量が少ないと、ソフトが不安定になりやすいことがあります。
- ソフトやOSを最新の状態に: デジタルアートソフトやパソコンの基本ソフト(WindowsやmacOS)は、定期的にアップデートが提供されます。これらのアップデートには、不具合(バグ)の修正が含まれていることが多いです。常に最新の状態に保つことで、トラブルが起こりにくくなることがあります。
- 複数のソフトを同時に起動しすぎない: デジタルアートソフトはパソコンの資源を多く使う傾向があります。絵を描く作業中に、他の重いソフト(動画編集ソフトやゲームなど)を同時にたくさん起動していると、パソコンに負荷がかかりすぎてソフトが不安定になることがあります。作業中は、使わないソフトは閉じておくのがお勧めです。
- ストレージ(空き容量)に余裕を持つ: パソコンのデータを保存する場所(ハードディスクやSSD)の空き容量が少なくなると、パソコンの動作が遅くなったり不安定になったりすることがあります。不要なファイルを整理したり、外部ストレージに移動させたりして、常に十分な空き容量を確保しておきましょう。
安心してデジタルアートを楽しみましょう
デジタルアート制作中のトラブルは、誰にでも起こりうるものです。しかし、この記事でご紹介した「こまめな保存」「自動保存の活用」「バックアップ」といった備えをしておくことで、大切なデータを失うリスクをぐっと減らすことができます。
また、実際にトラブルが起きてしまった時も、慌てずにご紹介した対処法を試してみてください。多くの場合は、データの一部を復旧させたり、問題を解決したりすることが可能です。
トラブルを過度に恐れる必要はありません。備えをしっかり行い、万が一の時も落ち着いて対処できるようにしておけば、安心してデジタルアートの創作活動を楽しむことができるはずです。ぜひ、デジタルアートの世界を存分に楽しんでください。